猿投山地図読み山行


猿投山地図読み山行
定例山行

実施日2019年9月7日
メンバー 全体CLあきち、全体SLエスパー、全体ASまこ
(パーティA)CLあや、Taco、コマちゃん、シューG、ひさぽん
(パーティB)CLエスパー、あきち、ミキティー、さとえちゃん、こーちゃん
(パーティC)CLホリー、まこ、梅ちゃん、たじー、アンちん(記)
全15名
コースタイム 猿投山駐車場にてオリエンテーション後、8:13出発-登山口(東海自然歩道入口)8:34-大岩展望台9:28-東の宮10:03- カエル石10:17-猿投山10:30(猿投山にて昼食後、11:30出発)-カエル石11:41-御船石11:54-西の宮12:01(境内にてレスキュー訓練後、14:00出発)-大岩展望台14:34-登山口(東海自然歩道入口)15:11-猿投山駐車場15:31

2019年9月の定例山行Bは、「地図読み山行」として猿投山で行われた。文字通り、登山における地図読みの技術を学ぶことが、この山行の主な目的である。

地図読みの技術は、登山において命に関わる問題ともなる「道迷い」を防ぐ上で、非常に役立つものである。このため、地図読みはすべての登山者が心得ておくべき技術である。同志会で定期的に開催されている地図読み山行は、会員が地図読みの技術を学ぶうえで貴重な機会となっている。

【下記の地図読みの技術が、「道迷い」を防ぐ!】
・登山前の準備(登山コースの確認、距離や標高差の確認、ルートのポイントの確認、エスケープルートの確認、概念図の作成)
・登山中の現在地とルートの確認
・目標物の同定(山座同定…コンパスを使用して現在地から遠くに見える山を知る)

恥ずかしながら、筆者は登山を始めて以来、上に挙げたことも含め、地図とコンパスを活用する方法を心得ていなかった。このため、地図読みの方法をきちんと学びたいと思い、今年の地図読み山行に参加することにした。今回は特に、紙の地図とコンパスを用いた地図読みに加え、最近では一般的となった、GPSによる現在位置確認機能を備えたスマホ用地図アプリの活用も実践するとのことで、この点にも強い関心があった。

今回の地図読み山行は、名古屋近郊の猿投山で行われた。参加者が15名だったため、3つのパーティに分かれて実施されることとなった(筆者はパーティCに参加)。各パーティは、地図読み山行に初めて参加するメンバーと指導役のメンバーに分かれ、初参加のメンバーは指導役にヒントをもらいながら地図読みに挑戦する形で行われた。8時頃、猿投山登山者駐車場(ルート概要図①)に集合し、はじめにCLから各メンバーに、今回使用する国土地理院発行の1/25000地図が配布された。ルート全体をA3用紙1枚に収めたものと、拡大印刷してルートをA3用紙2枚に収めたものの二種類であり、今日の地図読みはこれらを活用する。続いて、各パーティに分かれ、地図とプレート型コンパスを使用して現在地から目標方向を設定する方法を学んだ。この方法では、現在位置をいかに正しく把握するかがポイントとなるが、スマホのGPS地図アプリは現在位置の確認に非常に有効な手段となる。

その後、パーティC、B、Aの順に間隔を置いて、最初のポイントである猿投山登山口(東海自然歩道入口・ルート概要図②)に向け出発した。猿投川(正式名は籠川)沿いの舗装された林道を歩いて登山口に向かったが、季節柄、登山者やトレイルランナーで賑わっていた。また、(筆者は猿投山を訪れるのは今回が初めてだが)進行方向の右側(東側)を流れる猿投川は、名古屋市や豊田市の近郊にあるとは思えないほど透明な水だったのが印象に残った。程なく、猿投山登山口に到着すると、地図と照らし合せながら現在位置を確認したうえ、コンパスの方向を次の目標である東の宮に設定し直して再び出発した。

猿投山登山口(ルート概要図②)からは、いよいよ登山道が始まる。登山道に入ってからも、相変わらず多くの登山者で賑わっていた。猿投山の登山道は、愛知県の都市近郊の低山として親しまれているだけあり、よく整備されて歩きやすい。途中、小さなこどもを連れた登山者もあった。また、山行当日の数日前まで、愛知を含む東海地方は雨の日が多かったせいなのか、登山道の脇には様々な種類のキノコが見られた。また、盛夏を過ぎた都市部ではすでに耳にする機会が少なくなってきたセミの鳴き声(ツクツクボウシ、ミンミンゼミ)も、ここではまだ聞くことができた。

東の宮に向かって登っていくと、眺望の開けた場所に到着した。ここは、大岩展望台(ルート概要図③)と呼ばれている場所で、奥三河方面の眺望が開けていた。大岩展望台を出発すると間もなく、東の宮方向と西の宮方向の分岐(自然観察路分岐・ルート概要図④)に突き当たった。ここでは、早速地図読みの技術を活用し、地図とGPSアプリの両方で現在位置を確認したうえ、目標ポイントである東の宮の方向をコンパスで確認した上で正しい分岐を選び、先に進んだ。

その後、登山道は一旦林道に突き当たり、林道を横切った先に東の宮の参道入口である鳥居(ルート概要図⑤)が見えた。ここでも、地図と周囲の状況を照らし合わせた上で現在位置を確認したうえ、鳥居をくぐり抜け、石段を登って東の宮へと向かった。東の宮の境内にてしばらく休憩したのち、地図とコンパスで猿投山へのルートを再確認した。そのとき筆者は、地図上に記載された東の宮の地図記号(鳥居の記号)の位置と、実際の東の宮の社殿(ルート概要図⑥)の位置は一致していると思い込み、社殿の東側(地図上の右側)にルートがあると判断したが、実際のルートは社殿の西側(地図上の左側)にあった。地図上では、猿投山に向かう登山道は東の宮の鳥居の記号の東側(右側)に位置しているが、実際には社殿の西側(左側)に登山道があったのである。これについて、パーティリーダーから、地図上の記号の位置は敷地全体を含めた位置を示しており、建造物の配置とは必ずしも一致しないということを教わり、地図読みの注意点として参考になった。

東の宮を出発した後は、まもなく猿投山山頂(ルート概要図⑧)に到着した。途中で、ユニークな形の岩である「カエル石」(ルート概要図⑦)の脇を通過したが、登山ルートの中に現れるこうした特色のあるポイントは、単に物珍しい存在だけでなく、現在位置を把握する上では非常に有効な手段であることに気づいた(実際、このカエル石は、下山ルートでは分岐点の目印となるのである)。猿投山山頂では、各パーティが合流し、猿投山山頂で昼食をとって休憩したのち、下山を開始した。

下山開始後、登りルートでは通過したカエル石(ルート概要図⑦)のある場所で、登りとは異なる、西の宮に向かう分岐を進んだ。登りのルートに比べ、この分岐したルートは踏み跡が目立たないため、地図とコンパス、GPSアプリを活用して方向に間違いがないことを確認しながら進んだ。この途中で、筆者の参加したパーティCでは、パーティリーダーが山の植物に精通していることから、この山域に特徴的な樹木について教わり(例:ミズナラ、リョウブ、シキミ)、地図読みとは別の点で興味深いものがあった。

その後、西の宮(ルート概要図⑨)で各パーティが合流し、教育部メンバーを講師として、境内で簡易レスキュー訓練を行った。ここでは、ロープワーク(マスト結び、半マスト結び)の復習、半マストによる簡易懸垂下降の訓練、要救助者の搬出(ザック、ストック、雨具を活用する方法)を行った。いずれも、5月に行われたハイキングレスキューの復習であるが、個人では訓練できる機会が少ないだけに、今回改めて復習できたのは有意義であった。

西の宮での訓練後、下山を再開した。途中で、登りの際に東の宮方向に分岐した地点(自然観察路分岐・ルート概要図④)と合流し、ここからは登りと同じルートで下山した。もちろんここでも、地図とコンパス、GPSアプリを使用して、現在位置と進行方向をしっかりと確認した。普段の山行であれば、登りで一度通過した分岐であれば、記憶と下りの方向だけを頼りに進路を決めてしまいがちである。しかし、面倒と思わずに現在位置と進行方向を確認することが、地図読みの上達、さらには道迷いしない登山力の獲得につながると感じた。

その後は、登りと同じルートを下り、出発地点である猿投山登山者駐車場に戻って、無事下山となった。途中、登りでも通過した大岩展望台(ルート概要図③)に立ち寄った。午前、登りの際に眺めたのと同じ景色が、下りでは西日に照らされており、早朝に始まった山行と地図読みも間もなく終わろうとしていることを実感した。猿投山登山口に向けて下っていく途中で、地図上にはない分岐と踏跡(ルート概要図⑩)の存在を発見した。下山後に、登山者が各々の山行記録(GPSのログ)を投稿し、共有するサイトで調べたところ、この踏跡は、猿投山の「武田道」と呼ばれるルートの一部であることが分かった。GPSログの共有結果を見ると、この武田道以外にも、猿投山には地理院地図にはない踏跡(登山ルート)が数多く存在していることが分かり、ここ最近広まってきた参考記録の共有ウェブサイトの有用性に改めて気づかされた。

このようにして、筆者が今回初めて参加した地図読み山行は、地図読みはもちろんのこと、それ以外に多くの発見と気づきもありながら、無事終わりを迎えた。地図読み山行に参加してみて、登山において地図をどう活用すべきか、これまでよりも理解が深まったのは間違いない。筆者を含め、最近の登山者にとって、地図とコンパスは少し馴染みの薄いものになっているように思うことがある。ある山に登ろうと思えば、自分自身で地図を読み解かなくても、他の登山者がインターネット上に掲載した登山コースや歩行距離、標高差などの情報を容易に入手することができる。また、多くの登山者で賑わうようなルートであれば、たとえ地図とコンパスで現在位置を把握する技術が無くても、登山口さえ間違えなければ、後は登山道の標識や人の流れに従って歩いていけば、山頂まで概ね問題なく到達できてしまうことも否定できない。

しなしながら、本来登山者とは、そのような他人任せの姿勢ではなく、自らの意志でルートを選択し、いざ山に入れば自らの判断で正しいルートを選び、道迷いの危機にも自ら対処できなければならないと思う。その際、避けては通れないのが、地図読みの技術である。筆者にとって、地図読みを究めることはここに始まったばかりである。今回の山行での経験を生かし、たとえ平易なルートであっても、面倒とは思わずに地図とコンパスと格闘することを自分自身に命じたい。

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