雪上訓練(中級)


緊張の連続!雪上訓練(中級)
自主山行
日 時 平成29年3月5日(日)
メンバー CLハチオ、SLゆきむし、しょう、さいとも、たけ、山師匠、ひらちゃん、アキ、エスパー、のりさん、コッシー(記)
行 程 7:00菅の台BT~9:00千畳駅着~9:30行動開始~10:50宝剣山荘~11:00稜線より西面(A沢)に下降し訓練開始~15:30宝剣山荘~16:15千畳駅発(従業員用)~17:00菅の台BT
(一部は下山できずホテル千畳敷泊)

訓練なのに「怖い!」「これは訓練を超えている!」と思ったことは初めてだった。とにかく訓練が終わるまで必死、食事を取るのも忘れていた。
同志会に入会して4年目、つまり4度目の冬を迎えて、遭対部が主催する雪訓中級に参加した。同志会では、雪訓は2回行われる。初めて冬山を体験する初級者向けの雪訓初級と、ある程度技術がある人向けの雪訓中級がある。今回は、懸垂下降が出来ることなどの参加条件があり、一定の確保が出来る人が参加する訓練だった。僕は、ちょうど春合宿を控え、急斜面を確保しながら登り下りする必要もあるし、毎年雪訓には参加していることもあり、知識の整理を兼ねて参加した。
今、考えれば・・・・計画書を見た時にもっと緊張感を持つべきだった。宝剣岳は決して安心できる山でないが、参加者全員にビーコン・スコップ・特小(簡易無線機)、ハーケン、できればカムを持参と書いてあった。そこまで必要か?と思わなかったのが甘かった。これまでの雪訓と言えば、スタンディングアックスビレイの作成と手順を確認し、斜面を誰かが(わざと)走り、その衝撃を体験するという内容であったり、支点を作るためのスノーバー、バイルの使い方、時にはスノーボラードの作り方などを教わるものだった。
しかし、今回は違った。スタートは、千畳敷から高度順応も兼ねてゆっくりと宝剣山荘まで上がる。天気は悪くなく陽射しは暖かいものの、乗越浄土に出てしまえば、いつもの強い風が迎えてくれた。問題はそこから。誰一人足を踏み入れていないA沢(西面の大きな斜面)を下ろうというものだった。この斜面が、最初からいやらしい。かなりの斜度がある上、上から見れば氷が一面光り輝いている。足を出す場所も慎重に決めないと、ツルっと落ちたら一気に下まで落ちそうなところを緊張しながら全員が一列になって約30m下りる。実は、この30mの間に滑ってしまった。滑落したというのか、こけたというのか、とにかく3mぐらい落ちて、止めてもらった。最初からいきなりのショックと驚きで、正直焦っていた。
A沢の斜面は、経験が豊富な人と初中級レベルの人で、ちょうど怖さに差が出る場所だった。表面は氷化しているが、アイゼンをきちんと踏めば効く。だけど、斜度がかなりあって怖い。アイゼンを踏み間違えれば、確実に落ちる。恐る恐る降りる僕と、そのまま下山できる経験者。一目で違いが出る斜面だった。そういう点では、訓練適地と言えると思う。
A沢を少し下りたところで、11人が集合し、4パーティーに分かれてザイルを出し、いよいよ確保しながら下山の訓練をすることとなった。僕は経験豊富なTさんと2人ペアとなった。①まずはセルフを取るために、スノーバーを雪面に打ち込む ②そして、Tさんから下山を開始する。ビレイヤーの僕は、スタンディングアックスビレイをし ③下山するTさんは、途中でランニングを取るためにスノーバーを数本打ち込み ④終了適地まで下りる。
斜度は平均35度はある。場所によっては40度近い斜面もある。セルフを取る場所すら足場が危ない、もちろん終了地点もかなり不安定。つまり、最初から最後まで安定していない。訓練といっても、この斜面を見れば、経験者のTさんだって滑落すれるかもしれないし、その時は相当な衝撃が来ることは間違いない。ビレイをしながらも、もし滑落した時、ちゃんと止められるだろうか、セルフを取っているスノーバーが衝撃で抜けやしないか、一時も目を離せられない時間だった。訓練というより本番だった。
Tさんはザイル2本をつないで、80mぐらい下まで降りて支点を作ると、特小で今度は僕に下山を促した。もちろん、お互いの声は聞こえない、特小もフル活用だった。僕の下山も必死だった。斜面はどこまでもきつく、下でTさんが確保してくれているとはいえ、滑落すればススス~と落ちる。ランニングで打ち込まれたスノーバーが救ってくれるかもしれないが、かなり落ちる。相変わらず表面は一面氷化していて下まで光っており、怖さもある。自信がない場所は四つん這い、つま先を立ててダブルアックスで下りるしかなく、とにかく一つ目のスノーバーまで無我夢中で降りた。スノーバーを回収し、身体に所持し、そしてまた次のスノーバーをめがけて下山する。
ザイルをここまで長く張った訓練は今までやったことがない。形だけ確認する、形だけやってみるという訓練が多かった。アイゼン歩行を間違えれば滑落するほどの急斜面、お互いの声が聞こえないザイルの長さ、ビレイするのも、スノーバーでランニングを取るのも、不安定な場所で足場を作り、一人でやるしかなかった。訓練だけど緊張感があった。
下で確保してくれているTさんの場所まで下りた後、もう1回、ザイル1本分を同じように下山し、その後は、斜面を登り返す訓練を行った。
登り返しも勉強になった。登りながら、ランニングのためにスノーバーを途中で打ち込みザイルを掛ける、岩場があればシュリンゲで支点を作ってもいいし、ハーケンを打ってもいい、カムが掛けられるなら掛けてもいい。何を使っても良いから、自分で支点を作りながら、ザイル一杯まで登っていく。僕は、4回目の冬山だが、このような急な斜面で滑落におびえながら、支点を作り、登って行くのは初めてだった。途中からは、怖いというより、しっかりと支点を作ろう、どこを終了点にしようと考えて登ることができた。
今回の訓練は、実はもう一つドラマがあった。下った斜面の半分ぐらいを登り返した時に、Tさんから「ロープーウェイの時間が迫ってきているから急いで登ろう」と声がかかった。確か、最終ロープーウェイの時刻は15:50。時計を見ると、すでに14:30を回っていた。あと一時間ぐらいしかない・・・・」ここから確保しながら登り返すとなると、宝剣山荘まで30分では登り返せない。周りを見ると、他のパーティーも、時間を意識して急いで登り返していた。Tさんから「確保なしで、どんどん登ろう」と言われた。一瞬、確保なし?落ちたらどうするの?と思ったが、時間がないのも確かだった。
ただし、あとは登りだ。確実にキックステップをし、ダブルアックスできちんと進めば、落ちることはない・・・そう思って、前を向いて、緊張感を絶やさずに登ることにした。下にいるTさんにザイルの片付けをお願いしてしまったが、とにかく一歩一歩四つん這いになってでも登ることにした。
最終ロープーウェイには間に合わなかった。だが、従業員用に16:15があることが分かり、ご厚意で特別に従業員用に乗せてもらうことになった。だが、11人中5人は、そのロープーウェイにも間に合わず、ホテル千畳敷に泊まることになってしまった。あと10数分の差で、駐車場まで降りられた人とホテル泊の人が出てしまい、申し訳ない気持ちがあったが、ホテル組からはカラオケをしながら過ごす楽しい写メが送られてきたので一安心だった。
実践そのものと言える訓練、ザイルを目いっぱい張り、少人数パーティーで全員がスノーバーを打つ。今回は、頭による理解ではなく、身体に叩き込む訓練だった。

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