剱岳(2,999m)~北方稜線・裏剣の懐に抱かれる~


剱岳(2,999m)~北方稜線・裏剣の懐に抱かれる~

自主山行
〈日程〉2019年9月13日(金)前夜発~16日(月・祝)
〈天候〉14日/快晴 15日/晴れ 16日/晴れのち霧
〈メンバー〉 CL:gigi、SL:コッシー(記)、ゆうこりん、あゆ、ひー
〈コースタイム〉
9月14日(土) 黒部湖7:00→内蔵助谷出合8:12→ハシゴ谷乗越11:57→二股14:07→仙人池ヒュッテ16:47
9月15日(日) 仙人池ヒュッテ4:15→池の平小屋5:00→小窓雪渓入口6:30→小窓7:35→小窓王のコル9:10→三の窓9:40→池ノ谷ガリー→池ノ谷乗越10:30→長次郎のコル12:00→剱岳12:40→前剣15:00→剣山荘16:20
9月16日(月) 剣山荘8:30→剣沢小屋9:00→室堂14:00→黒部湖15:00

【1日目】
初日は始発バスに乗れるかどうかで小屋への到着時刻が大きく左右される。三連休で晴れ予報となれば扇沢での混雑は必至だったが、切符売り場に4時に並ぶことで無事に始発バスの切符を手に入れる事が出来た。7時に予定通り北方稜線への長い道の一歩を踏み出す。
しばらく黒部ダムからの観光放水を後ろに見ながら黒部川沿いの道を歩く。内蔵助出合の分岐を左へ曲がるが案内標識が小さく見落としに注意が必要。

黒部川から離れると内蔵助平/ハシゴ谷乗越への登りとなる。道はしっかりと整備された道を2時間ほど登ると内蔵助平に到着。この頃より陽射しが強くなり始めたが、内蔵助平周辺は沢からの湧水が多数ありここで十分な量の水を補給をする。

ハシゴ谷乗越までの急登を進むと、やがて展望台に着く。ここは360度の展望があり今日のような快晴の日であれば抜群のロケーションを楽しむ事が出来る。
南股(剣沢)への下りは非常に険しく、その名の通り数カ所でハシゴを使いながら降りていく。南股の河原で左岸へ架かる仮設の橋を渡り二股へ向かう途中にある「へつり」部の通過は傾いた木の足場を鎖を頼りに通過する本日の核心部と感じた。

二股のつり橋を渡ると最後の急登が待っている。折からの暑さに加え無風状態で体力を削られ非常に厳しい登りとなる。小屋からの情報で「仙人新道の途中にある水場で水分の補給を」と言われていたが目的の水場は枯れていた。我々は事前に二股の河原で水を補給しており事なきを得たが、この水場をあてにするのは危険と思われる。仙人峠の分岐まで登り詰めれば本日の宿泊地の仙人池ヒュッテまでは目の前。最後の木道を歩き約10時間の行動を終えた。

【2日目】
【出発】
3:30起床、4:15仙人池ヒュッテを出発。5:00池の平小屋に到着し、ゆっくりと朝食をとる。5:45空が明るくなりヘッデンをしまって、いよいよ池の平小屋から小窓雪渓に向かう。道は分かりやすく、途中からは旧鉱山道を進む。「これよりバリエーション」という看板を過ぎると、気分が引き締まってくる。回り込むようにどんどん進んで行くと、眼下に小窓雪渓が見えてくる。すでに雪渓を上り詰めている先行パーティーが何組か見えた。我々も雪渓の入口に向かって下りて行く。

【小窓雪渓】
6:30小窓雪渓入口に到着。ここでアイゼンを装着する。先行する男性パーティーがアイゼンを着けずに登って行ったが、やはりここは8本以上のアイゼンがあった方が安心だ。
小窓雪渓を登り始めてすぐに右岸の大滝が見える(登る場合は左手に見える)。これが小窓雪渓のポイントの一つ。逆のルートで小窓雪渓を降りる場合は、旧鉱山道に登り移る場所が分かりにくい。良く見ると岩に◎印が付いているが、天気によっては見落としてしまう。大滝を過ぎたあたりが雪渓から旧鉱山道に登り移るポイントとして覚えておく必要がある。
我々は、小窓に向かって雪渓を登り始める。所々あるクレバスを避けながら、上部を見上げると岩や草が見える。やはり今年は雪渓が少なめだ。雪渓歩きも例年よりは短い時間で終えることができた。雪渓が終わると、あとは岩と草付を登り小窓に向かう。

【小窓】
7:30小窓に到着。小窓からは前方にそびえ立つ小窓王が良く見える。次に目指すのは、小窓王の下のコルだ。コルまでは、小窓雪渓を真下または左手に見ながらトラバースしていくが、道は分かりやすく、順調に進むことができた。途中、記録では短く急な雪渓が2ヶ所あり、ピッケル・アイゼンで慎重に進む!というポイントがあるのだが、今年は雪が少なく雪渓が全くなかった。さらに進むと、記録では「黒い大岩」が見えるはずなのだが、これも見つけられなかった。小窓王のコルに向けては、途中からハイマツ帯を進んだことで最後にガレ場にぶつかった。約150mの急なガレ場だ。このガレ場は、両サイドに踏み跡があり、直登することも右手の草付に回り込むこともできる。また、もう少し手前から稜線に上がれば、ガレ場を登らずに済む。結局、我々はガレ場を直登して登ることにした。上を見上げれば、稜線沿いを進んでいるパーティーもあった。

【小窓王のコル】
9:10小窓王下のコルに到着。コルでは複数のパーティーやソロの方など7~8名で休憩した。このコルからは、池ノ谷ガリーが良く見える。先行している人たちがあちらこちらで登っている姿が見えるため、我々も気合いが入る。
ただし、池ノ谷ガリーを登る前に三の窓まで降りなければならない。その下降が発射台の急な下りで、ガレたバンドを一気に下りて行く。ちょうど、10人パーティーが発射台に向けて登ってくるのが見えたため、10人が上がって来るのを待ってから降りることにした。

【発射台の下りから三の窓】
9:30発射台を下り始める。急斜面のガレ場で、足をどこに置いてもズルズルと流れてしまい落石も起こしやすい。砂地は足を取られていやらしいが、岩もしっかり上から踏まないと落としてしまう。この下降では、後ろから降りてくるパーティーによる落石に何度か肝を冷やされた。足場に気を取られる下山で、背後から「らっ~く」と声が聞こえると、難しい体勢で振り向かないといけないぶん怖い。
9:40三の窓に到着。小さなテント跡がいくつかあり、ここが拠点の一つだということが分かる。10分ほど休憩して、いよいよ池ノ谷ガリーの登りだ。

【池ノ谷ガリーの登り】
過去の記録では、左側が比較的安定と書かれていたが、先を進むパーティーが右端から歩き始めていた。登り始めは右端を進み、途中で左端にトラバースして登っている。踏み跡もなんとなくそんな感じで付いている。我々も、前を行くパーティーに合わせ、右端から歩き始める。途中で左端に移り、あとは概ね左端を登るのだが、ルートによってはやや真ん中に入ったり、また左端に移ったりしながら上へ上へと進む。今回の池ノ谷ガリーでは、大きな落石に何度も見舞われた。ガリーを上から降りてくる人の落石が多く、中には大きな段ボール箱サイズの岩も数回落ちてきた。もの凄いスピードで転げ落ち、それが途中の岩に当たり、分裂して大きく飛び上がり、さらに加速して落ちていく。ガリーにいる全員が何回も「らぁ~く」「らぁ~く」と叫び続ける騒然とした状況が数回あった。我々は左端にいたので、それほど危険はなかったが、ガリーを上がり始めた他のパーティーは落ちてくる方向が予想できない落石に、岩に隠れたり、壁に寄ったりして避けていた。

【池ノ谷乗越】
10:30池ノ谷乗越に到着。ここは、八ツ峰にアタックしている人が、最後に懸垂で降りてくる場所だ。八ツ峰の最後の急峻な岩を見上げながら20分ほど休憩する。
池ノ谷乗越から池ノ谷の頭までは、目の前にそびえる60度ほどの大きな壁を登る。先ほどまでの足場の悪いガレ場とは真逆で、今度は3点確保でクライミングをすることになる。岩が固くしっかりしている上、手や足を置く場所はあるため難しくはないが、気を許すと危ないので慎重に進む。ここでは、リーダーのgigiから、「もし逆方向からこの壁を降りるとしたら、どうやって降りる?」と質問があった。懸垂が良いのか、クライムダウンが良いのか、ザイルを垂らしてプルージックで降りた方が良いのか?その時のメンバーによるが、自分ならどうするかイメージを膨らませながら登った。大きな壁を乗り越えると、ついに目の前に剱岳が現れる。いつみても雄大な姿だ。

【長次郎の頭】
壁を越えてからは稜線を進んで行く。最初こそ馬場島側に回り込むが、その後は、熊の岩のテラスを眼下に見ながら、または左手に見ながらトラバース気味に岩稜帯を進んで行く。途中、岩場の中に一張だけ張れる綺麗なテン場がある。長次郎のコルに向けては、トラバースをしながら、徐々に下って行くことになるが、そのルートファインディングが今回の最大の核心だった。踏み跡がいくつもあり、人が踏んだ跡なのか、雨による水の流れの跡なのか、その水の流れを誰かが踏んだ跡なのか、はっきりしない。記録では、左岸中段を進むとあったが、踏み跡がたくさんあり迷った。そこで、メンバーで姿が見える範囲でルートを分けて、踏み跡があるかないか声を掛けながら進む。私は、最も下までトラバースで下って行く踏み跡を選んだが、長次郎のコルが見えたあたりで、突然大きく切れ落ちた岩稜に行きついてしまった。そこには、懸垂をした捨て縄が何重にも残っており、そのすぐ近くにも別の懸垂の跡があった。その岩場をクライムダウンするにはやや危なく、どうしようか迷っていると、上部を歩いていたgigiから「上から行けるぞ」という声があり、また、中段を進んでいたゆうこりんから、「岩にへばりつけばコルに向かって進めそう」という声がかかった。ゆうこりんとあゆが岩にへばりつきながら回り込むように進んだため、僕も中段まで登り返し、同じように岩にへばりついて進んだ。
無事にコルへとつながる道に出ると、後ろから来ていた女性がかなり上部の稜線を難なく降りてくるのが見えた。我々には見つけられなかったが、稜線の上部からコルに向かって降りるルートがあったと思われる。ここは調査不足であった。

【長次郎のコル】
12:00長次郎のコルに到着。コルでは、眼下に広がる雲海が一面に真っ白く広がっており、とても綺麗であった。長次郎のコルからは、あともうひと踏ん張りで剱岳の頂上だというルートが見える。先行パーティーが進んでいる姿も見える。稜線伝いの快適な岩登りとなる。ただし、途中でやや大きな壁にぶつかり、踏み跡が右・真ん中・左と3つに分かれていた。真ん中コースには黒黄色の虎ロープが下がっていた。どのコースを行こうか迷ったが、虎ロープを信じて真ん中を進む。真ん中コースは、やや垂直のクライミングコース。手・足の置き場はあるものの、少しハング気味の岩もあるため、虎ロープを掴まないと岩を乗り上がれなかった。どうやら右コースが一番登りやすいようで、左コースを進んだ人も結構厳しかったと言っていた。

【剱岳】
12:40剱岳頂上到着。3年越しの北方稜線を天気に恵まれて無事に登りきることができた。頂上では、抜きつ抜かれつつ北方稜線を一緒に登ってきた他のパーティーも休憩しており、お互いに健闘と成功をたたえ合って記念撮影を行った。
十分休憩を取った後、剣山荘に向かって下りて行くが、予想通りの大渋滞。疲れた身体には渋滞による停滞は堪える。少し進んでは、足場の悪い場所での立ち止まりを繰り返し、前剣15:00、剣山荘に16:20に到着した。

【3日目】
3日目は、剣山荘から剣沢を経て、14:00室堂に到着。バス等を乗り継ぎ15:00黒部湖。

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