50周年記念山行 赤岳主稜(2899m)


2023年1月自主山行(50周年記念山行)
赤岳主稜(2899m)
日程:2023年1月28日~29日 天気:曇り
メンバー:CLぐっさん SL コッシー しのぶちゃん ナガ まっさん(記)

コースタイム:
1日目 7:00美濃戸(赤岳山荘) 10:00行者小屋(テント設営) 13:00主稜取付の下見
15:00行者小屋(テント泊)

2日目 7:00行者小屋 8:30主稜取付 15:30赤岳山頂 17:00行者小屋(テント撤収) 
20:30美濃戸(赤岳山荘)

山行記録:
<1日目>
主稜取付の到着時間が当初の予定よりも遅れ、さらに風雪が急激に強まってきた為、この日は主稜取付の下見までとし、翌日にアタックすることにした。テンバに戻ってからは温かい夕食(鍋料理)を皆で囲んで、お酒も飲みながら楽しい時間を過ごすことができた。

<2日目>
【Aパーティ】ぐっさん、しのぶちゃん、ナガ(記)
文三郎尾根の主稜分岐に着いた。主稜取り付きまでは見るからに危なそうなトラバースを緊張しながら進む。滑ったら終わりだが直前に降った雪が積もっているが踏み跡もしっかりあり比較的歩きやすい。チョックストーン直下でロープの準備を始める。昨日下見で遠目から眺めていたときは岩が雪で埋まっているように見えたが、真下でみると入口を封鎖しているようにそそり立っているようだ。

1ピッチ目はいきなり核心部。ぐっさんがリードでチョックストーンを難なく超えていく。2番手のしのぶちゃんもスムーズに超えていった。最後は自分の番、アイゼンを岩に押し当て、慣れないバイルを雪に叩き込むとかなりしっかりとした手応えがある。絶対に外れない感触を信じ身体を持ち上げるとフワリと浮くように荷重移動ができた。あとは2手、3手も同じで意外とスムーズにクリアできた。

2ピッチ目も同じ順序でクリア。次の3ピッチ目はしのぶちゃんがリードを交代、4ピッチ目で自分が初リード、ドキドキするも緩やかな雪稜なので難なく終了点に到達。ここから先行パーティの順番待ちが毎回発生、極寒で手足の指を動かしていないと痺れるような痛みが発生する。

震えながらも順番にリードを代わり、雪稜では変則コンテで登り切りようやく山頂へ到着。頂上山荘の脇で一息つくも、とても長居できる状況ではなかったので3人で記念写真を撮って下山。なんとか暗くなる前にテンバに着くとやっとここで達成感と満足感そして無事に帰って来れたことの安堵。暖かいテントで飲むコーヒーは最高に美味しく感じました。

【Bパーティ】コッシー、まっさん(記)
主稜取付に到着したのが8時過ぎ。この日の主稜は全体で5パーティが登攀し、一番最後のパーティとなった。積雪期バリエーションのリードは未経験であったが、事前の訓練(高木山でのアイトレ&リード訓練)の経験を信じて時間短縮のため、つるべ方式で登攀した。

[文三郎道主稜分岐~主稜取付]
主稜取付へは文三郎道の最後のハシゴを登り切ったあたりから左の急な雪壁をトラバースした。この雪壁は雪の状態が悪いと雪崩れる可能性があるため、状況判断を慎重に行う必要があると思われる。途中で足を滑らすと下まで落ちてしまう危険を感じながら、約50mのトラバースを慎重に通過した。

[1ピッチ目:チョックストーンからルンゼを登り、リッジを右上~階段状の岩場手前]
最初からいきなり核心部のチョックストーンがある1ピッチ目のリードを担当した。セカンドと違って「落ちれない」というプレッシャーを感じながら登攀開始。直前の寒波の影響で積雪量が多く、最初は慣れないバイルがなかなか決まらなかったが、隣接する岩のクラックに引っかけるとスムーズに決まるようになった。バイルに体重を預けるのに最初は躊躇したが、絶対に外れないと信じて身体を持ち上げると、チョックストーンを無事に超えることができた。その後は雪の詰まったルンゼを詰め上がり、ルートが屈曲するところのピナクルで中間支点を取り、右上に登り切った先に終了点があった。ルートが大きく屈曲している影響により、登攀時に自分に繋いだロープが下に強く引っ張られるような抵抗力を感じたので足を滑らせないよう注意が必要であった。終了点ではルートの屈曲による摩擦抵抗によりロープの引き上げがとてつもなく重く、セカンド登攀時のロープアップでも余計に時間を要した。まだ1ピッチ目が終わったばかりであったが、かなりの体力を消耗した。

[2ピッチ目:階段状の岩場~雪稜手前]
右側の残置支点寄りではなく、左側のカンテ寄りに登った方がホールドが豊富で登りやすかった。

[3ピッチ目:雪稜~中間岩稜手前]
緩いリッジの雪稜であったので、時間短縮のためコンテで登った。雪稜に出ると束の間ではあったが太陽が姿を現し、後ろを振り返ると阿弥陀岳から硫黄岳までを含む絶景を一望することができた。

[4ピッチ目:中間岩稜~雪稜中間]
傾斜が緩めの階段状の岩場を左寄りから登り、リッジを右上に登ると雪稜に出た。雪稜中間の小ぶりな岩にペツルの支点(見落としやすい)を見つけ支点構築した。

[5ピッチ目:雪稜中間~上部岩壁手前]
雪稜上部は傾斜が少し急であり、両側は下まで切れ落ちているため、コンテではなくザイルを出した方が無難。上部岩壁に着くと先行パーティ(4パーティ目:2名)に追いついた。ぐっさんパーティ(3名)は全体の3パーティ目であり、2パーティ目のグループが渋滞を引き起こしているようだった。ここから天候が崩れ始め、太陽が姿を潜め、酷寒強風の中での大渋滞により長時間の停滞を強いられることになる。手足を動かして寒さに耐えながら順番を待つことになった。

[6ピッチ目:上部岩壁~岩稜リッジ(チムニー乗り上げ部)]
階段状の岩壁を右側から回り込んで登り、左の壁沿いにトラバースし、途中のハーケンと小さいピナクルに中間支点を取り、チムニー基部に到達。急傾斜のチムニーをよじ登ろうとするが、寒さと疲労困憊で身体が思うように動かない状態でバイルや足の置き場がなかなか定まらず、もがきながらやっとの思いで岩稜リッジの上に出ると、少し登った先に大きいピナクルがあり支点構築した。後で分かったことだが、チムニーを登り切ってすぐ右側にペツルの支点が2つあったようだ。(残置スリングが無く気づかなかった)

[7ピッチ目:岩稜リッジ(チムニー乗り上げ部)~凹角のルンゼ]
コンテでも問題無かったかもしれないが、後半の凹角のルンゼ部の傾斜が少し急で雪が付いていたので、念のためスタカットで登攀した。リードのコッシーが終了点に到着後、特小トランシーバーが突然通信不能となるトラブルが発生した。強風によりコールも聞こえない状況であったが、お互い目視できる位置にいたのでジェスチャーで意思疎通を取った。

[凹角のルンゼ~赤岳山頂]
凹角のルンゼ到着後はコンテで傾斜の緩い雪稜リッジを登って一般登山道に合流し、山頂に到着したのが15時半だった。大渋滞による長時間の停滞により、主稜取付から山頂まで約7時間を要した。山頂では暴風雪で日没が迫っており、達成感に浸る余裕もなく急いで写真を撮って下山を開始した。下りは赤岳展望荘経由で地蔵尾根から下山し、無事にテンバに戻って来れたときにようやく達成感が込み上げてきた。バディのコッシーには大感謝です。

今回過酷な気象条件の中で赤岳主稜を達成できたのは、バリエーション経験豊富なぐっさんを中心に、バディのコッシーやメンバー全員のご協力のおかげであり、苦労して登攀した分だけ記憶に残る素晴らしい山行になりました。

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