宝剣岳中央稜


宝剣岳中央稜
自主山行
日付:2016年6月4日(土)
メンバー:ハチオ、ゆきむし

菅の台駐車場 7:15 = しらび平駅 7:45/8:00 = 千畳敷駅 8:07
千畳敷駅 8:20 ~ 中央稜下部岩壁 10:00 ~ 取付バンド 10:45/10:55 ~ 宝剣岳山頂 14:05 ~ 千畳敷駅 15:20
千畳敷駅 15:30 = しらび平駅 15:37/15:50 = 菅の台駐車場 16:22

菅の台駐車場から始発のバス、ロープウェイを乗り継いで千畳敷カールへ。
先の冬の少雪の結果、1ヶ月以上も雪融けが早いこの残雪期。千畳敷駅を出て周囲の斜面を眺めると、やはりここも雪が少ない。
雪が消えた時期においては植生保護のために中央稜への下部からのアプローチは禁止され、宝剣岳山頂から懸垂下降して取り付きまで降りなければならない。よって気になるのは、目指す宝剣岳中央稜の下部まで雪がつながっているかどうか。どうやら辛うじて残った雪の筋、そしてガレ場を繋いで辿れば、なんとか取り付きまで行けそうだ。
乗越浄土へと登る人達で賑わう登山道を外れてほぼ直登すると、中央稜の下部岩壁に行き当たった。見上げると、真上には回収不能ロープが不気味に垂れ下がっている。それから岩壁と雪の境を辿って左上する。今回2人とも中央稜は初挑戦で事前の情報収集に励んだが、どうも取付の位置がハッキリしない。
これ以上は確保なしでは危険だろう、という場所にハーケンが打ってあったので、そこで身支度を始めた。

今回は全ピッチともクライミングシューズで登った。以下のピッチグレードは体感による。

0P目(IV/A1):ゆきむし
岩壁と残雪の境界から離陸!岩がボロボロに脆くて予想以上に悪い。少し上がるとハングに阻まれ、下から見上げた以上に難しい。アブミは畳んだままで腰に付けている。しまったなあ、こんなことなら登り出す前にアブミをバラしておけば良かった…。とは思ったものの、イージーデイジーで体を引っ張りあげると、アブミ無しでも強引に突破できた。ガバを掴んでハングを乗り越して上に行くと、左上バンドに乗り上げ、ちょうどそこはビレイポイントだった。真新しいリングボルトが3本打たれている。
ああ…そういうことか。ようやく理解できた。登り着いたこの左上バンドこそが本来の取付バンドだったんだ。そんな訳で、今回の最初のピッチは「0P目」と称すことにする。

1P目(A1):ハチオ
さて、ここからが本来の中央稜1ピッチ目だ。まずは左上バンドをそのまま登るのが簡単なので、それに誘われるがままにハチオが左上してみると、ぶち当たったフェイスが随分と難しいらしい。ビレイしているこちらからは死角でよく見えないのだが、「フリーは無理!最初からアブミを準備しておいた方が良いよ」とのこと。結局この後、ひたすらアブミを架け替え、ほぼフリーセクションは皆無でハチオはビレイ点へ。フォローしたゆきむしも同様にアブミの架け替えに終始した。こういうピッチでは、体を楽に引き上げられるイージーデイジーの御利益を実感する。
このピッチを登り終えて、「1ピッチ目は左に行くほど難しい、でもそっちに吸い寄せられる」という先人の教訓を思い出した。なるほど、あれは正しかったのか…と痛感。

2ピッチ目(III/A1):ゆきむし
安定したテラスから左側へ進み、左上する滑り台状のスラブを登る。左端を辿ればフリーで突破できそうだが、なにしろ足元がスパっと切れ落ちて高度感が半端じゃない。フリーに拘ると時間がかかりそうだったので、割り切って2歩ほどのA1で右側の垂壁を速攻突破し、後は簡単なフリーで凹角下の安定したビレイ点へ。

3ピッチ目(IV/A0):ハチオ
ビレイ点からは見えないが、ここからが「オケラクラック」を含む、中央稜ハイライトのピッチとなる。
まずは出だしの垂直に立った凹角にハチオが挑むが、結構難しそう。突破して姿が見えなくなると、上から「快適なクラックだ~!」というハチオの快活な声が聞こえてきた。それからさほど長い時間もかけず、50mロープをほぼ使い切ったところで「ビレイ解除」のコール。
追いかけて登ってみれば、オケラクラックは快適そのものだった。クラックといっても、クラックらしい技は使わず、普通にフェイス登りするだけの簡単なもの。斜度も実はせいぜい50度程度といったところ。なにより開放感があってよく目立つ場所なので、登っているだけで楽しい。

4ピッチ目(III):ゆきむし
純粋なフリーピッチはここだけ。ワイドクラックが走った岩をひと登りすると、すぐに平坦なハイマツ帯となる。そのまま踏み跡を辿ると宝剣岳の山頂に到着した。本来の取付バンドから山頂まで、今回は約3時間を要したことになる。

午後2時を過ぎ、登山者の影もすっかり薄くなって静寂に包まれた山頂。暫くのんびり過ごしていると、「そういえば、途中撤退せずちゃんとトップアウトできたマルチピッチは久し振りのことだなあ…」なんてことを思い出す。
山頂を後にして、この日の充実した登攀を振り返りつつ千畳敷へと下った。良い一日だった。

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