槍ヶ岳(3,180m) 北鎌尾根・天狗池


槍ヶ岳(3,180m) 北鎌尾根・天狗池
平成30年8月18日(土)~20日(月)
自主山行
メンバー:CL Gigi、SLこっしー(記)、あゆ、ひろこ

コースタイム
8/18
4:50平湯~5:45上高地~9:00横尾山荘~13:30水俣乗越~16:30北鎌沢出合(テンバ)

8/19
4:20北鎌沢出合~7:00北鎌のコル~10:10独標(P10)~14:00 北鎌平~15:30槍ヶ岳頂上~16:00肩の小屋(テンバ)

8/20
7:00肩の小屋~8:30天狗原分岐~9:30天狗池~10:00天狗原分岐~14:00横尾山荘~17:00上高地~17:30平湯

 今回の北鎌尾根はとにかく恵まれた。「前泊の仮眠」「晴天」「涼しい気候」「乾杯の生ビール」「雲海に沈む最高の夕陽」・・・
最初からラッキーだった。あゆが予約してくれたタクシーの運転手(66歳)さんは陽気なおじいちゃん。知り合いのタクシーに言っておくから、タクシー待機所の2階で寝ていいよ!と言って下さった。えっ本当か?と思いながら23時過ぎに平湯に到着。知り合いというのが「はとタクシー」。鍵の隠し場所を聞き待機所の2階に上がると、そこは畳の和室が2間。蛍光灯もコンセントもつく。早速、畳にシュラフを敷き、あぐらをかき、明日からの北鎌の成功を祈って、4人とも缶ビールで乾杯。早朝までの短時間だが、畳の部屋で足を延ばして熟睡することが出来た。
翌朝起きたら、またびっくり。4時半には運転手さんが待機所の前に来ていた。なんて良い人なんだ~と感謝しながら、早朝一番で上高地に到着する。もちろん、帰りもその運転手さんにお願いした。
 北鎌尾根は、こっしーが2回目、Gigi、あゆ、ひろこは初めて。水を持ち長時間歩く体力とルートファインデイングが求められると言われている。そのルートファインディングだが、結論から言えば、北鎌尾根の踏み跡は明瞭。全て稜線通し(つまり直登)で行ける。一か所だけ、独標(P10)だけ千丈沢側(右側)に巻くと簡単だ。稜線通しといっても、多少の登り降りはある。特に降りでは踏み跡が千丈沢側(右)も天上沢側(左)もあるが、全て千丈沢側に降りれば、稜線に戻れる。わざわざ天上沢側に巻く必要はない。

8/18
タクシーで5時過ぎに上高地に到着。最初の印象はとにかく寒い。先週まであれだけ暑かったのが嘘のよう。ぐっと気温が下がり10℃程度しかなく手がかじかむ。トイレ・行動水の補充を終え、上高地を5:45分に出発、ここから横尾までの3時間はおしゃべりタイムだ。横尾からいよいよ登りが始まる。槍沢ロッジを経てババ平へ、ババ平には立派なトイレができていた。ババ平から大曲分岐に着いたのが12時。Gigiは先週も同じ場所を歩いているから、ホントにご苦労さんといった感じ。大変なのはここから。大曲から水俣乗越までの急な直登は、疲れもある中、陽射しを全身に受け、汗を一杯かきながら歩く。途中すれ違う人に、水俣乗越からどのくらいで降りて来ましたか?と聞き、残りの時間を推測しながら歩く。息も上がり、ヒーヒー言いながら水俣乗越に13:30に到着。既に相当疲れたので、ここで大休憩。水俣乗越では、先に休憩していた3人組のパーティーが一足先に北鎌沢に向けて下りて行く。僕たちは30分ほど休憩して、いよいよザレた天上沢を下りて行くことにした。沢はいきなり急なザレ場だが、横の樹林帯に巻道があり、そこをくねくね行けば、枝を掴みながら下りることが出来る。比較的足に負担はなく、平らな河原まで下りることが出来た。そこからは、安定しない大小の石を踏みながら沢沿いを好きなように歩く。足場が悪いので疲れる上に、その距離がとても長い。歩いても歩いても沢が続く。上高地からの歩行時間が11時間を超え、もういい加減に疲れたわ!という頃に沢の音が。少し歩くと先行しているテントがちらほら見えてきた。今日のテン場、北鎌沢の出合いに到着だ。明日のスタート場所(取付口)は、1本目立つ白樺の木(目印)の横、入口の大きな岩にはケルンもある。そのあたりで水場を探したが、全く水がない。音もしない。テントの外に出ていた人に聞いたら、ここの場所は枯れていて水はないよと言われてがっくり。仕方がないので、テント設営を3人に任せ、僕は空のザックにプラティパスを全て持って、沢まで15分ぐらい戻り、10リットルの水を汲んできた。初日の夕食は、イワシのパスタとハンバーグ。お酒もビール・ワイン・焼酎とあり、テントの外で楽しく食事をして20時に就寝。

8/19
朝3時起床。時間短縮のため、朝ごはんは各自行動食で済ませテントを撤収。4:20に出発。ほぼ同時刻に、僕たちの他に2パーティーが一緒に歩き始める。歩き始めて10分強で北鎌沢の左俣・右俣の分岐に到着。ここは沢の水が潤沢に流れており、定石通りに水を補給する。4人とも3~4ℓの水を背負うと、ザックの重みがぐっと増し、いよいよだな!と覚悟を決める。北鎌沢のコルに向けては、基本的には枯れた右俣を右へ右へと言われている。テン場から北鎌沢のコルまで高度差600mを2~3時間かけて上がるハードな登りだ。沢の岩を踏み、時に枝や草も掴み、もくもくと登る。コルまでは2~3ヵ所の分岐があるが、基本的に右を選択する。但し、1ヵ所、クライマーほいほいと言われる分岐がある。そこだけは右に行ってはいけない。そのまま沢を直進しないと、とんでもない方向に行ってしまうので注意が必要だ。枯れていると言われていた右俣だが、コルの手前の2200mぐらいまで沢の水が流れていた。わざわざ2時間以上も下から水を担いできたのに!とちょっと残念だった。北鎌沢のコルの手前が少し分かりにくい。沢を必死に登っているとそのまま沢沿いを直進してしまう。実は最後の最後に小さな分岐があり、そこを右に行かないとコルに着けない。分岐にはケルンがあるが、気を付けて見ていないと見落としてしまう。直進しても稜線には出られるが(コルから天狗の腰掛側に50~60m行った場所に出る)、不明瞭な急な草付を登らないといけない。コルが見えて、もうすぐだ!というところで右に行く分岐(ケルン)があるので注意したい。僕ら以外の2パーティーは間違えて、草付を迷いながら直登していた。1週間前と違い、この日は妙に涼しくて、虫がほとんどいないのが助かった。
 北鎌沢のコル(P7とP8の間)には予定通り7:00前に到着。コルには1張分の素敵なテン場があり、そこに座って休憩。次に目指すのは、天狗の腰掛(P9)、そして独標(P10)手前の基部だ。コルから天狗の腰掛までは踏み跡が明瞭、天狗の腰掛から独標の基部までも稜線通しで迷うことはない。
 踏み跡に沿って歩き、目の前にそびえる独立峰といっても良いほどの大きな独標が近づいてくると、千丈沢側(右側)に巻道がはっきりと見えてくる。そこが独標の基部だ。今年7月に大天井ヒュッテの方が、巻道のスタート地点にトラバース用の虎ロープ(5mほど)を付け替えてくれたおかげで、その新品のロープが目に入る。僕らは、この虎ロープを使って、独標を巻く道を選択した。
 独標の巻道は、まず足場がやや不安定な(崩壊している!)トラバースをロープをしっかり握って進む。その後は千丈沢側を大胆に下り、そのまま道なりに少し登り返すと、一ケ所出っ張った岩がある。これが目印の岩で、念のためロープを出して通過しても良い。ただ、よく見ると、一段下に安定した足を置ける場所があるので、そこを使って通過すれば、出っ張った岩も難なくクリアすることができる。出っ張った岩の後は、道なりにまた少し登ると、チムニーがある。このチムニーは少しハングしているのでいやらしいが、お助けロープが掛かっている。チムニーを通過すると、少し広く安定した場所に出る。その先も巻道は続いているが、巻道をどんどん進むよりは、そのあたりで稜線に戻るのが一番安心。チムニーを通過したら、稜線に出られそうな登りやすい岩稜帯が現れるので、そこを独標に向かって直登していくと快適に稜線に戻ることができる。稜線まで上がると、そこは独標(P10)の頂上を少し過ぎた場所に出る。天狗の腰掛側に数分戻り返せば独標の頂上に立つことができる。独標到着は10:10、コルから3時間。前半の核心部分は順調に行くことができた。
 ここまでこれば、目の前に槍ヶ岳の全貌が現れる。子槍・孫槍・ひ孫槍を4人で確認しながら20分ほど休憩する。
独標から北鎌平までは、P11~P15を通過する。P11からP13は多少登り下りがあるが、全て稜線通し(直登)で踏み跡もしっかりしている。どんどん進んで行くと、明らかに白くザレた山(P14)に到着する。この白い山は足場が崩れやすい。踏み跡は直登も右巻きもあるが、先行パーティーが全て直登して行くのを途中で見ていたので、僕たちも稜線通り(直登)を選択する。確かに足場は悪いが、踏み跡はしっかり確認でき、手をかける場所もあるので、稜線通しが楽だと思われる。
 問題はP15。過去の記録やヤマケイのDVDは長い巻道を選択している。P15の手前に来ると、こちらが正解です!と言わんばかりに明瞭な巻道が千丈沢側(右側)にあり、そちらを選択してしまいそうになる。ちょうど、僕らがP15の手前に到着した時に、稜線沿いに登っていた男女2人組が登れずに降りてきた。どうしたんですか?と聞いたら、1人の女性が、足場が不安定で怖いから巻道で行きたいと言ったらしく、降りてきたという(降りる方が怖い)。これは相当いやらしいのか?と不安になったことと、DVDが巻道を選択していたことから、僕らも巻道を選択することにした。しかしそれが失敗だった。P15は巻かない方がいい。
 巻道の特徴は、明瞭な踏み跡を進んですぐに、胸のあたりに岩が突出している場所に出る。岩を掴みながらのけぞり気味にトラバースをするか、四つん這いにしゃがんで進む。ザックが岩に当たり落ちそうになるので注意する。そこを越えて踏み跡を更に進んで行くと、巻道が突然崩落しており、トラバースが危ない。なによりそのあたりからの踏み跡が突然薄くなり、人が歩いてないことが分かる。巻道を選択した人は、そこから稜線に向かって登り上がるしかないのだが、スラブ状の岩を登ることになる。登れなくはないが、ちょっといやらしい。僕らは結局、巻道をあきらめ、もとの場所まで戻り、P15は稜線通しに直登することにした。登ってみれば、少しザレてはいるものの、踏み跡はしっかりしており問題ない。先ほどの人が躊躇していた場所も難しくはなく、落石だけを気をつければ安全に登れる。僕らが直登したことで、2人組も結局僕らの後に稜線通しで登ってきた。
 P15の巻道で時間をロスしたことや、2回休憩したこともあり、北鎌平には3時間半ほどかかって14時に到着。僕らは休憩ごとに30分ぐらい時間を取り、体力の回復に努めてゆっくりと進んだ。時間に余裕があることもあるが、お天気が良く、目の前の槍ヶ岳は何度見ても楽しいし、千丈沢側には黄色く土がむき出しなった硫黄尾根が圧倒的な存在感で連なっていた。今年の春合宿は硫黄尾根に行く予定だったが天気が悪くて中止していた。もし行っていたら、一体何日かかるのだろうか?と永遠と連なる長い尾根を見ながら、中止で良かったわ・・・とつぶやいてしまった。
 北鎌平は、黒く大きな岩がゴロゴロしている平らな場所。うまく岩をどけて整地されたテン場が数か所点在しており、ビバークにはもってこいの場所だ。ここから槍ヶ岳頂上まであと1時間。最後の休憩をしっかりと取る。北鎌平からは、ケルンがあったり、意味不明な看板があったりするが、なんとなく出てくる目印を進めば、次第に頂上が近づいてくる。目指すのは頂上直下の有名なチムニーだが、途中にも小さなチムニーが2つほどある。もちろんチムニーの周りも岩なので巻いて登ることができるが、それなりに楽しいのでチムニーを登った方がいい。その一つに、ちょうど真ん中に岩が挟まっているチムニーがある。チムニーの奥に入り過ぎるとその岩が邪魔で登れない。手があまりないが、身体を左によけて右側に手を伸ばしながらうまく岩を掴めば登ることができる。それほど難しくないが、先に登った人がお助けロープを出してあげれば、不安な人でも簡単に登れる。そうこうしているうちに、頂上直下のチムニーが登場。いよいよ最後だ。ロープなしで行けるのかな?と一瞬思うが、良く探せば足の置き場も手のガバも幾つもあり、焦らずに登れば問題ない。最後のチムニーを越えれば、あと1分で頂上の祠の裏に出る。僕らは、ひろこ、あゆ、こっしー、Gigiの順で進む。多くのギャラリーが上から覗いている中、一番最初に祠に到着したひろこは、歓声とともに多くの拍手をもらっていた。
槍ヶ岳頂上には15:30に到着。長かった北鎌尾根の大成功を4人で大喜びし、成功の握手を交わした。今回は本当に天気が良く、頂上からは遠くに富士山も見えるほどで、360度壮大な山々を見ることができた。もちろん、北鎌尾根、西鎌尾根、東鎌尾根のきれいな稜線も美しい。槍ヶ岳下山後は殺生まで降りる予定だったが、ダメ元で、テン場が空いていますか?と肩の小屋で聞いてみたら、まだ3~4ケ所空いているとのこと。お盆の翌週はちょっといいのか、運良く肩の小屋でテントを張ることができた。テントを張ったらベンチに移動。肩の小屋の生ビール(1000円)を全員迷うことなく注文して、幸せの乾杯をした。これも初めてのことだが、夕方の時間帯に雲海が一面に広がり、そこに夕陽が落ちていく幻想的な夕焼けをみることができた。多くのギャラリーと一緒に見たオレンジの空は、言葉では説明できないほど美しいものだった。2日目の夕食はちらし寿司。万一、北鎌平でのビバークする可能性を考えて水をあまり使わないメニューにしたが、この酸っぱさが疲れた身体には最高だった。

8/20
5時起床。ゆっくり支度をして、肩の小屋を7時に出発。今日は下山するだけだが、とにかく長い。途中、天狗原の分岐で荷物をデポして、天狗池を散策することに。天狗池に槍ヶ岳が映るといいな~と期待して行ったが、3日目はちょっと曇りがちで槍ヶ岳の頂上あたりは朝から雲。結局、池まで行ったが、「逆さ槍ヶ岳」を目にすることができなかった。その後は、徳澤のソフトクリームだけを楽しみに、槍沢、横尾、徳澤と下山。途中で、タクシーの運転手さんに電話をし、上高地から温泉に寄って、スムーズに帰名することができた。

8/18

8/19

北鎌沢出合~北鎌沢のコル

北鎌沢のコル~独標

独標~北鎌平

北鎌平~槍ヶ岳頂上

8/20

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