コース(馬場島~赤谷尾根~赤谷山~白萩山~赤ハゲ~白ハゲ~大窓~池の平山北峰、南峰~小窓~小窓の頭~池の谷ガリー、剱岳~早月尾根~馬場島)
日程:2017年5月3日~5日 CL記録:ぐっさん SLルート気象:GIGI 装備:山師匠 食料会計:コッシー
昨年の夏合宿は赤谷山~剱本峰の北方稜線を今春合宿の下見を兼ね実施した。水や藪に苦しめられ本当に厳しく辛い夏合宿であったが、雪のついた状況をイメージし、ルートを目に焼き付けてきて今回の春合宿に挑んだ。下見を兼ねた夏合宿では私とコッシー、もっちゃんもの3名であったが、今回は私、コッシーに山師匠、GIGIの大先輩が加わり4名での挑戦となった。
数少ない記録を全員で分析し、計画書を作り2月に富山県に提出、無事受理をされた。本格的な訓練として越百山で各技術訓練、西穂西尾根で本番さながらのシュミレーション訓練を実施し本番に挑んだ。
<前日> 5月2日(火)20:00名古屋発、交代で運転しながら滑川ICへ。伊折手前で閉まったゲートが出てきて少し迷いながらも馬場島24:30着。予想外にほぼ満杯の馬場島荘Pにテントを張り、ミニ宴会をし25:30就寝
<1日目> 5月3日(水) 天候晴れ 馬場島5:30~取水口から取付6:30~P1563~赤谷山16:00(幕営)
4:00起床 大量の装備を振り分けパッキング。予備日も含め5日分の食料やザイル、ガチャ等で1人25kgはありそうだ。
雪があるので大量の水は持たなくていいが、それでも1人2Lは持つ。どんなに重くても、アルコール類はしっかりザックに入っていた。山岳警察詰所により入山報告。数組我々と同ルートで入っているとの事。全体的に硬い雪の上に、柔らかい雪が乗っており、雪崩のリスクが高い旨の注意を受け5:30出発。途中5名組に抜かれた際、行程を聞いたら本日中に三ノ窓まで行き八峰をやると聞き驚くが、私が会話した人はよくわかっていないようであった。
白萩川の1本目の橋を渡ったところが赤谷尾根の末端。事前に調べた情報では、そのあたりに赤テープがあり、取り付くとの事であったがテープを見つけることができず、しばらく進み取水口を渡ったところの雪の急なルンゼから取り付く。先ほどの5名は赤谷尾根を登るような事を言っていたが仙人谷をつめて入っているのが見えた。大丈夫だろうか?
急な雪、岩、草付き、藪を2時間ほど全身でよじ登り、かなり消耗しながら赤谷尾根、P1563手前にでる。尾根に出てからは快適な雪稜歩きとなるが、大きな亀裂やナイフリッジ、柔らかい雪のアップダウンに手こずりながら16:00赤谷山山頂着。きれいで神々しい北方稜線が剱本峰まで続いている。明日から越えなければならない尖った池ノ谷山や、小窓の王、池ノ谷ガリーも見える。見れば見るほど不安になるような急峻な稜線だ。会の仲間が入っている鹿島槍と白馬の後立山連邦も間近にきれいに見える。
整地しテントを張り、水を作りながら夕食準備をする。今回は火力の強いガソリンバーナーを持ち込んだ。多少重いが火力が強く水も短時間で作れ今回のような積雪期縦走には便利である。火に掛けた鍋を一旦下ろした際、なべ底に使い捨てライターが張り付き、それを知らずにまた火に掛け、少し燃えたところで気が付きすぐ消火した。危うく爆発事故が起きるところであった。明日からの厳しい縦走に備え少しでも軽量化しようとたくさん食べ、アルコール類をセッセとのみ、20時就寝。
星がでていて風も無く気温も低くない。
<2日目> 5月4日(木) 赤谷山5:30~赤ハゲ6:50~白ハゲ8:45~大窓10:00~大窓の頭~池の平北峰12:40、南峰13:40~小窓17:00 天候晴れ
3:00起床。昨日の寝不足もありよく寝れた。廣さんは暑くて寝れなかったと言っていた。天候は予報どおり、風も無く快晴で星も出ている絶好のコンディションである。すぐお湯をわかし朝食のラーメンを作る。下界では起き抜けにラーメンなんて絶対に食べないが山では何でもありである。本日の長い行程に備え何しろエネルギーをとらなくてはならない。本日は現在地から大窓までと、大窓から小窓までの大きくわけて2つのパートがある。
朝食後撤収し全員でビーコンチェックをし、前半パートの出発。白萩山へのトレースは山頂経由になっていたが東側から大きく巻く。巻くことにより15分ほど先行している前のパーティーを抜けるかと思ったが急斜面のトラバースに時間がかかり、かえって差が開いてしまった。続いて昨夏は劇藪の赤ハゲ、白ハゲを進む。途中オーバーハングしていて、数トンはあろうと思われるセッピの横を慎重に進む。万が一セッピが崩れたら、一貫の終わりである。ナイフリッジ状の箇所で雪が解けてボロボロの岩がむき出しになっているところも何箇所か出てきて緊張が絶えない。急斜面の藪と雪を下り大窓に到着し大休止。前半パートが終わった。大窓には白萩川方面からのトレースがあった。天気もよくぽかぽかで、しばらく緊張の糸をほぐす。近くに青赤の防災ヘリが何度か行き来している。おそらく遭難者の救助にあたっているのであろう。気温が高いせいか小窓方面からは何度も雪崩の爆音が鳴り響き、スノーシャワーが確認できる。我々も少し気を抜くと何百mも簡単に落ちてしまうような箇所をずっと進んでいるので改めて気を引き締める。
後半のパートは、大窓の頭、池の平北峰、南峰と壁のような山を越えていかなければならない。まずは300mほどの大窓の頭までがんばる。大窓の頭まで来ると目の前に尖った池ノの平山が見える。まずはコルまで降り、北峰にどこから取り付くか調査をする。夏は東側に回りこみ岩場を登ったが、今回は垂直な雪壁となっていて回りこめない。東側のルンゼにかなり下からコルまでの踏み後が付いていた。きっと滑落した人が這い上がってきたのであろう。正面から他のパーティーが登った痕跡があったため我々も同様に正面から取り付く。垂直な雪壁、岩登りとなり、これまで疲れでへばっていた山師匠が急に元気になりサクサク登って行く。登り切ったところで、GIGIが雪溜りに上半身がはまり抜けるのに苦労をしていた。そこからは更にダブルアックスで雪壁を登り池ノ平北峰制覇である。休憩もそこそこに南峰コルへクライムダウンし、すぐ南峰へ登り返す。落ちたら一環の終わりであるため下も見ず、上も見ずひたすら左右のアックスを打ち、アイゼンの蹴りこみに集中し無事南峰のピークを踏む。
本日の幕営地の小窓までは下るだけ。しばらく行くと急な雪壁が出てきたのでロープをセットし懸垂下降で降りる。その際始点を岩でとってしまい、回収時ロープが動かず結局登り返して再セットし回収。1時間はロスをした。その下でも懸垂下降が必要となり、また回収できないというトラブルが発生し、登り返しをしなくてはならない状況になった。今回はGIGIが降りる際、亀裂にはまり体が一回転してしまったせいかロープがねじれ、結び目が動かなくなったようだ。ここでも結局1時間程度のロス。気温が高いため、雪の状態は最悪で、ステップは作れないし斜面では少し動くだけで雪がどんどん崩れてしまい、まともに立ってられない。それからあと1ピッチの計50m3ピッチの懸垂下降で小窓着。早くテンバについて昼寝でもしようと思っていたのに結局夕方になってしまった。小窓は風が通り抜けているためテント設営後ブロックを急いでつくり、水作り&夕食をとり就寝。山師匠が少し具合が悪そうで、元気が無いのが気に掛かる。
<3日目> 5月5日(金) 小窓5:30~小窓の頭のコル7:50~三ノ窓~池の谷ガリー~池ノ谷乗越9:30~剱岳11:40~早月小屋15:30~馬場島19:00 天候晴→曇り
本日も3時起床。天気予報は5/5は晴れ 5/6は雨 強風のため、できるだけ本日中に下山したい。山師匠は具合が悪いのか、なかなか起きない。とりあえずお湯を沸かしていたら、起き非常に快調との事。(ぐっすり寝ることで回復したとの事)
早く出発したかったが、準備、撤収に手間取り結局本日も5:30発。朝の雪が硬いうちに急斜面をダブルアックスで小窓の王基部まで登る。(夏道よりかなり小窓の頭よりルートをとった)。三ノ窓までは50m懸垂1回で降りる。三の窓までのトラバース中すぐ近くに小窓の王上部から50cmくらいの落石があり、急いで進む。それから池ノ谷ガリーを登るが比較的雪が安定していて助かった。乗越に到着し大休止。もう本峰も目の前である。八峰は雪がしっかり乗っていたがトレースがあった。同じく源次郎尾根は2パーティー取り付いていた。雷鳥のつがいも近くで見ることができ癒される。サクサクと、短時間で長次郎谷左又に付き、そこからは上部は立っていても雪面に顔が付くような70度はある雪壁を登り、山頂手前に到着。4人で横に並び11:40本峰山頂着。長く、生死との境のような縦走路をずっと進んできた北方稜線を全員無事に踏破した。山師匠が泣いていた。
それまで快晴であったがガスが出だしている。早月尾根を下りに掛かる。ロープは出さなかったがバックで下る危険箇所が多い。途中10名程度のガイドツアーとすれ違う。予定は5/6に本峰まで行く予定が、悪天の為、5/5に小屋からピストンでいけるところまで行くとの事。15:00早月小屋着。コッシーのザックの肩ひもが切れる。疲れもあったので小屋に幕営しようとしていたところ、小屋の方に明日朝からはかなりの荒天のため、できれば本日中に下山したほうがいいと言われる。確かに雪の急斜面に大雨では危険だし、余力もあったためがんばって下ることにする。途中尻セードに失敗し、プチ滑落も起こしながらも19:00に無事に下山。近くのみのわ温泉で汗を流し、滑川のファミレスで久しぶりにまともなご飯を食べる。
帰りの車中は疲れていたが、7月に行く木曽駒のコースである「聖職の碑」のDVDを見ながら走ったおかげで眠たくならずに帰ることができた。
翌日は予報どおり朝から雨。入山日取り付き付近で我々を追い抜く際少し会話した5名組パーティーが5/6に三の窓雪渓で雪崩に巻き込まれ、死亡者1名、骨折2名がでたことを知り、なんとも複雑な気持ちになる。荒天の予報が出ている中どのような行程で進んだのか機会があれば知ってみたいものである。
(ぐっさん感想)
昨年の夏合宿で同ルートの偵察をし、年間を通し準備をしてきた。技術、メンバー、天候、運、全てに恵まれ、一生涯忘れられない厳しく素晴らしい北方稜線をやり遂げることができました。メンバー、応援してくれた仲間、本当にありがとうございました。
(山師匠感想)
自分の登山人生で最高の日になった。難度の高い山行は準備山行をきちんとできているかに、かかっていると思います。その中で沢山の確認事項が暗黙の内にお互いの確認に繋がると思います。
(GIGI感想)
剱岳頂上での山師匠の喜びの声が印象に残りました。揃って登れて本当に良かった。今回の企画を立て、まとめていただいたぐっさんに感謝します!天候にも恵まれましたが、計画、訓練山行にしっかり取り組んで合宿に向かえたことが成功につながったと感じます。みなさん大変お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。
(コッシー感想)
斜度がきつく長い直登の連続、弱い雪のトラバース、ダブルアックスでの登り下り・・・一日中、絶えず緊張感を持ち続ける必要があり、3日間全てが精神的にも肉体的にもハードだった。同じメンバーでの数度の宿泊訓練が、本番につながり、訓練なくしては合宿の成功はなかったと思う。それだけメンバーとの訓練と信頼が大切だと実感した。普通では見ることも、歩くことも容易ではない残雪期の北方稜線を歩ききれて、本当に充実した合宿だった。
槍ヶ岳も見渡せるほど天気も良く、素晴らしい景色だった。
It’s great !! and impressive
Capten, Ohisa! Hayo kaettekoya!