ジャンダルム(3,163m) 飛騨尾根


ジャンダルム(3,163m) 飛騨尾根
新穂高~白出沢出合~天狗沢出合~飛騨尾根~山頂~コブ尾根の頭・幕~天狗沢~岳沢小屋~上高地
自主山行
2018年4月28日~30日
メンバー
CL:ぐっさん、SL:ひろさん、装備:コッシ、食糧:のりさん

コースタイム
4/8
8:00新穂高駐車場→10:45白出沢出合→13:00天狗沢出合→D尾根(Co.2300付近)
4/9
4:20 D尾根(Co.2300付近)→17:00ジャンダルム山頂→18:00コブの頭
4/10
6:20コブの頭→9:00岳沢小屋→12:00上高地

当初春合宿Fで硫黄尾根に行く予定であったが、CLが予備日の5/1が仕事で休めなくなったため、パーティー内で協議し合宿は中止し、2泊3日で実施できるジャンダルム飛騨尾根に自主山行で行くことにした。飛騨尾根も会でも初の計画となるため、情報収集を直前まで行い実施。

4月28日 土曜(晴れ)
 1日目記録 コッシ
天気予報は3日間とも晴れ。バリエーションには最高の状況だが、むしろここ最近はずっと暖かすぎて、雪はあるのだろうか?雪が腐っていたら歩きにくいし、日焼けも心配だなと思いながら、早朝5時に名古屋を出発。予定通り8時前に新穂高温泉駐車場に到着した。手早く準備をして、観光センター前でトイレを済ませて、8時30分にいよいよ私たちのジャンダルム飛騨尾根がスタートした。

新穂高からの林道歩きは、完全に夏道で雪が全くない。4週間前に西穂北西尾根を登るために歩いた時はもっと雪があったのに、道の端に残るような残雪すら見当たらない。汗だくになりながら、夏道用ショートカットも使い、穂高平小屋に9時20分に到着。雪のない蒲田富士を眺めながら衣服を調整し、西穂西尾根の入口を案内する看板が新しく設置されていることを発見し、写真を撮りながら20分ほど休憩した。再び、林道を白出沢出合に向かって歩く。分かりきっている道だが、結構長いし、荷物も重いから早くもバテ気味。それでも白出沢出合に10時30分に到着した。天気はホントに快晴、あまりの暑さにノリさんは、半袖Tシャツ一枚の夏の服装になっている。

白出沢を1700mぐらいまで登っていくと、目の前に連なる尾根が広がって見える。あれがC尾根だよ、あれがD尾根だねと確認することができた。今回は、直前に飛騨尾根に行こう!と決定したことから、4人がそれぞれ短期間で過去の記録を読んできた。記録はいくつかあるものの、F尾根・D尾根・C尾根の書き方が少しずつ違う。A尾根・B尾根に至っては、別の尾根だったりする。読めば読むほどこんがらがるのだが、ここはぐっさんが冷静に読み解き、4人の理解を一致させた。沢を登り詰めてぶつかる尾根の末端から登る。ここがD尾根の末端だ。D尾根をどんどん登って行くと、F尾根にぶつかるが、そこまで登り詰めてしまうと、C尾根にトラバースができない。D尾根の途中、2600m~2700mぐらいのいいところでC尾根にトラバースして、核心の飛騨尾根にチャレンジすると決めた。トラバースは明日になるが、記録の中に最後の木に着いたらトラバースするというのがあった。確かに、最後の木だと分かる目印の木はあった。
沢をゆっくりと登り詰めて行くが、雪がゆるくて足が沈む上、ところどころ夏道も見え隠れする。枝も相当出てきており、とにかく歩きにくい。1800mぐらいまで登ったところで、廣さんから1本沢を間違えてないか!と指摘があった。白出沢なら水の流れる音がするのに、ここでは何も音がしない。それはまずいと言うことで、GPSで場所を確認して、ちょうど大滝が見え始めた辺りで、正しいルートの白出沢に移動した。
白出沢をしばらく行くと、天狗沢との分岐の場所、真正面に尾根が広がるのが見えてきた。ついにD尾根の末端が現れた。(13時20分)
ちょうどここでオレンジのテントを発見。外人さんと日本人の2人組がすでにのんびりとくつろいでいた。声を掛けてみると、明日はテントを置いて、朝から飛騨尾根をやり、奥穂経由で白出沢を下って、一日で戻ってくるという。
私たちと同じコースだし、荷物が軽いというのがうらやましい。そんな時に悪魔のささやきが私たちを襲う。荷物は重いし、腐った雪は歩きにくいし、もう5時間も歩いてきて、正直疲れている・・・。ここでテントを張って、明日、頑張るのもいい案だよな~と口に出してみる。
そこで、一旦、休憩することにして、4人でどうしようか作戦会議。その時、ぐっさんから、テントを置いても一人2㎏ぐらいしか変わらんよ。あまり軽量化にはならないし、速く歩けるか分からないから、やっぱり進んだ方が良くないか?と意見が出された。まだ時刻が13時台だったこともあり、私たちは予定通り、先に進むことにした。

そうと決まれば、あとはD尾根のどこから取付くかだが、右に200mぐらい進んだところから登っている記録が確かあった。私たちもそれを見習い、尾根を見ながら、150mぐらい右を進んだところから取付いた。取付くとすぐに尾根には出るが、この尾根が細い。雪が少ないせいか、岩もかなりむき出していてアイゼンが歩きにくい。それに枝も力強いので、枝を手でぐっと押さえながら、アイゼンで岩や土を踏みこんで登る。斜度もかなりきつく、バイルがないと登れない。バイルを枝や土に差し込み、つま先立ちで登り上がり続けるしかなく、次第に太ももがパンパンになっていく。荷物も重いことから、なかなかスピードが出ない。やっと、大滝が目の前に現れる2000m地点に14時20分に到着した。
地形図を見ると、高度を上げるにつれて斜度のきつさが増していくが、2200mあたりと2300mあたりだけ等高線が少し広い。よし!テンバはこの辺りで探そう!ということになり、あと200~300m、太ももはきついが頑張ることにした。
2100mあたりまで上がって来ると、すぐ下に天狗沢が迫ってきた。あれ?私たちは尾根を苦労しながら登ってきているけど、沢を詰めてきた方が楽だったんでは?と少しがっかりするが、もう登ってきてしまったから仕方がない。引き続き、アイゼンを斜面に刺し、重い荷物を背負い、急斜面を2200mまで上がった。1か所テントが張れそうな場所があったが、ぐっさんからもう100m頑張ろう!という声に、2300mまで上がることにした。
2300m地点まで上がってきたら、ちょうどテンバに良い場所を発見。疲れも相当たまってきていたし、時間も16時。ここから先は、見るからに斜度がまた上がるため、もうここに決定!ということでテンバを作ることにした。4人で斜面の雪を崩し、素敵なテンバを作ることができた。

天気は一日中良く、外もまだ暖かいことから、水作り、食事作りはテントの外で行うことにした。のりさんが作ってくれたガーリックが効いたトマトパスタは実に美味しかった。残念だったのは、お酒の打ち合わせをするのを忘れ、4人ともウイスキーを持って来てしまったこと。誰かは日本酒を持ってくるだろうとお互いに配慮してしまい、ウイスキー三昧となった。あっ、廣さんが背負ってくれた虎の子のビール500mlは乾いた喉に最高だった。
いよいよ明日は、C尾根へのトラバースと飛騨尾根へのアタック。2時起床、4時出発を決め、体力回復のため20時に就寝した。

4月29日 日曜(快晴) 2日目記録 ひろさん
2:00 起床 いつものようにコッシーから時間ですよ!のコールがかかる。けっこう暑くて寝苦しかった私は寝ぼけ眼である。朝食はチーズリゾット。朝からあったかい食事がうれしい。テントを出るとまん丸く大きな月明かりに、たくさんの星。今日もよい天気になりそうだ。ふと下を見るとヘッデンの明かりが二つ見える。もう行動開始しているらしい。昨日、天狗沢出会い1925mにテントを張っていた連中だろうか。
テントを撤収し、4:20に 出発。ヘッデンは付けて歩き始めたが、すでにまわりは白み始めていて、かなり明るくなっていた。朝一から急な斜面の登りが足にこたえる。前爪を蹴り込み、つりそうになるのを堪えてひたすら登る。しばらくして上を見たら、先行する二人組がいる。えっ!天狗沢の出合いから朝早く出た二人組か。天狗沢を登りつめて、D尾根に上がったらしい。それにしても何と足の速い連中だ!
D尾根上の最後の木、そこがC尾根へのトラバースの基点だとのネット情報をたよりにその木をめざす。
5:05約2,500メートル地点で休憩。右上を見ると先行する二人組がC尾根へトラバースしている。
6:00最後の木、白樺がある。作戦会議。ここ約2600m地点からγ沢をトラバースしC尾根へ取り付くことに決定。雪はほどほど締まっており、ロープは出さず通過。インゼル状の小尾根を横切り、C尾根へあがる地点が草付き混じりの急傾斜で慎重に登る。7:00やっとC尾根に上がり、 7:20まで休憩。

いよいよ飛騨尾根のハイライトが始まる。ただし暫くははい松のやせ尾根歩き。D尾根からC尾根へのトラバースは諸説あって、もっと上から行っている事例もあるので、我々は下すぎたのかなという迷いもおきた。ま、どこを行くかは雪の状態に左右されるということか?
C尾根上は雪が少なく、やがて岩稜となる。T5からT4への登りからロープを出す。といっても岩峰が先々まで続いており、みな初めてのルートなので果たしてここがT5なのかどうかよくわからない。その後も高時計をたよりに推測する。
最初はぐっさんがリード。登り終えて、ロープを固定し、あとの3人はプルージックやタイブロックで登った。輝石安山岩というらしい岩質は節理が縦に発達していて、手のホールドは豊富なものの、アイゼンをおくスタンスにはちょっと苦労する。荷物を背負って、細かいスタンスに立つと、足が緊張するのがわかる。岩は堅いが、細かい節理が多く、うっかりもつと剥がれる。
2ピッチ目だったかな?10メートルくらい登った先のコルから右手に直上するところにピトンが2本あり、左の方にもぐらぐらのハーケンがある。ここは上のピトンのお助けシュリンゲをつかみのっ越した。しばらく岩稜歩き、そしてまたもや岩登り。
上部からは先行したパーティのコールが聞こえ、まだ先が長いことが予感された。さらに下からは二人組パーティがトラバース地点に迫っている(彼らにはT2?あたりで追いつかれ、先に行ってもらった)。
次のピッチだったか、左にのびたスラブでアイゼンが決まらず、ガリガリと滑ってしまう。リードしてなくてほんとに良かった。

その先、ピナクルがある地点で終了点手前に高さ2メートルくらいのコブ状の岩が出てきた。どうやって越すんだとぼやいたら、馬乗りになって!と声がかかる。馬というより、駱駝の背中といった感じで(まだラクダに乗ったことはないが)、一つ目のコブは馬乗りで進んだものの、次のコブはザックが邪魔してうまくいかない。で、馬の背中をつかみ、馬から降りて、左腹のあたりのスタンスを拾う感じでくりぬける。ふ~ヤレヤレだ。ここは最初から右手をトラバースした方が良かったのかも。

岩稜地帯は岩屑の堆積といった感じで、うっかり石を落とすことも何度かあり、雪のルンゼに落ちていく岩に大声でラクと叫び続ける。
登る前は3ピッチくらいかと思っていたが、次から次へとピッチがでてきてヘロヘロで、しんどくてしょうがなかった。結局8ピッチくらいロープを出した。昼過ぎくらいにはジャンダルムに立てるという目論見はあえなくついえて、太陽がだいぶ傾きかけた17:10 ジャンダルムに先頭が到着。 17:35まで休憩。

ロバの耳、奥穂高岳、穂高岳山荘、そしてアルプスの山並みを疲れ切った体で眺めやる。穂高岳山荘でビールをという願いは夢と消え去り、今宵のねぐら、 コブ尾根の頭に18:10着。整地をしてテントをたてる。19:00 炊事開始。春雨、カレーライスの夕食。昨夜の残りのウィスキーをなめ、就寝。

4月30日 月曜(快晴) 3日目記録 のりさん
4:00起床。メンバーの体力の消耗を考慮し、当初予定の奥穂高から白出沢を下るをやめ、エスケープルートの天狗のコルから天狗沢を下り上高地を目指すことにした。
6:20出発。時々雪面と岩稜帯をアイゼンで下る。ナイフリッジが続き、アイゼンは歩き辛く、岩に滑りそうで慎重に下る。飛騨尾根でアイゼンには慣れていたがここも緊張した。2年前、ひろさん達が遭難しビバークした場所を確認した。
7:40天狗のコルのすぐ手前のルンゼにトレースがあり、そこから天狗沢を下ることにした。雪は途中からシャーベットになり踏み抜きにも神経を使う。長い下りに足が疲れそれぞれが時々シリセードする。
9:00岳沢小屋。小屋で休憩すると決めていた。快晴で暖かくTシャツで過ごす小屋は快適そのもので、ドリンクを購入し1時間の大休憩となった。
11:40上高地登山口。ザックの重さがいよいよ身に染みたとき、上高地ターミナル着。12:00。メンバーと硬い握手を交わした。
新穂高の駐車場まで、バスの乗り継ぎが悪くタクシーで移動。有料道路込みで\10,800。新穂高の駐車場では初日天狗沢の出合で会った2人組みのパーティーに再会した。二日目に下山できず奥穂の小屋に泊まったとのこと。何しろお互い無事の再会ができてよかった。
新穂高倶楽部で汗を流し、体をほぐし無事帰名した。

●ぐっさん感想 硫黄尾根での合宿が私の都合により飛騨尾根へ変更し、申し訳なかった。変更した飛騨尾根は硫黄尾根よりは短いものの、複雑で急峻な地形でさらに登る人も少ないため情報も少なく、不安を伴っての計画であったが天候、メンバーに恵まれ大きな怪我も無く無事完登、下山できたことを心から感謝したい。
●ひろさん感想 3月の西穂高北西尾根がしんどくて、体力不足を痛感していたのに加え、足の具合も心配な中での参加でした。40年近く前、姫路の山岳会にいた時、そこの先輩達が登ったのが飛騨尾根です。それも暮れの厳冬期!自分には到底無理な所と思いつつ、憧れていました。春とはいえ今回のチャンスを逃したら行けないと思ってました。想像以上に登攀個所が多く、距離も長くてホントにしんどかった!はぁはぁ息をしながら、どこまで続くのだろうと思いながら登っていました。快晴で風も穏やかで天候が味方してくれて助かりました。足が遅く、皆さんには迷惑かけてしまい、申し訳ないです。飛騨尾根への想いで今回ワガママを通してもらいました。皆さんに感謝です。
●のりさん感想 コブ尾根の頭から見た ジャンに続く飛騨尾根は 険しくて長い 圧巻の景色だった。よくこんなところ登ってきたと感心してしまった。今回 当初の合宿は流れたが このメンバーのおかげで未知のルートを体験でき 貴重な経験を積むことができた感謝したい。
●コッシ感想 軽く行きましょう!と言ったことを後悔するほどだった。永遠と長い、怖い、危ない、暑い、体力が尽きた・・・と苦しかった。取付きばかりを事前に調査したが、肝心の飛騨尾根のクライミングについては調べが甘く、ガツンとやられてしまった。無事に帰ってこられて、ホントに良かった。

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