2025 年 6 月 7 日(土)から 8 日(日)にかけて、鳥居道山キャンプ場にて「ツェルトビバーク訓練」を遭難対策部主催にて実施しました。本訓練には、会のメンバー13名が参加し、それぞれがツェルトの設営や活用について実践的な学びを深めましたので、その様子を報告します。
●訓練の目的について
ツェルトは、名古屋山岳同志会の標準装備として多くのメンバーが携行している重要な山岳用具のひとつです。ツェルトは緊急時の避難や悪天候時の簡易シェルターとして使用できますが、実際に使いこなすためには適切な設営方法を理解し、練習を重ねることが不可欠です。そのため、今回の訓練では、緊急時でもしっかりとツェルトを設営できる知識と技術を身につけるとともに、実際にツェルトで寝泊まりする体験を通して、その装備の意味や有効性を体感することを目的としました。また、単なる机上の知識ではなく、実際の使用場面を想定した訓練とするため、さまざまな条件下を想定した設営方法や寒さを凌ぐ項目としました。
● 訓練の内容
当日は、下記のような訓練プログラムを用意しました。
1. 立木を利用した設営方法
2. 本体だけしかない場合の設営方法
3. トレッキングポールによる設営方法
女性にも参加しやすい環境を選んで、水洗設備が整っているキャンプ場にて実施しました。参加者の約半数以上がベテランであったため、設営デモンストレーションは行わず、各自が自身のスタイルでツェルトの設営を進めました。立木や丸太、岩、カラビナなど周囲の自然物や装備品を駆使した設営方法では、ベテランたまさんの経験を基にした知恵を伝授いただき、実践的な工夫を学ぶ機会となりました。また、ツェルト本体だけしかない場合の設営では、標準装備の細引き 10mを活用し、ツェルト内部に細引きを通して自在結びでテンションをかける方法にて設営しました。これらの工夫は、整
地されていない山中での緊急ビバーク時にも応用できる内容であり、非常に意義深い実地訓練となりました。
さらに、トレッキングポールを活用した設営方法では、ツエルトの四隅をペグダウンした後にポールを立ててガイライン(張り縄)とクローブヒッチを使い設営する方法を実践しました。出入りのしやすさ向上やフライシートの組み合わせといったベテランならではの工夫もみられ、実際の山行における即応性・柔軟性が体現されました。また、遭対部長による「整地されていない環境下での寒さを凌ぐ方法」の実演もおこなわれ、低体温症など緊急時対応の意義深さを改めて学びました。
● 参加者からのコメント
訓練後に参加者から寄せられたコメント(一部要約抜粋)では、「ツェルトを張るのが初めてで緊張したが良い経験になった」「新人、ベテランが和気あいあいと協力して設営でき、山行の楽しみが増した」「ザックの肥やしにせず、今後もソロテン泊などで積極的に活用したい」「緊急時のためだけではなく、通常山行の楽しみとしても訓練の機会を定番化したい」といった前向きな声を多数いただきました。訓練の前後には自由参加形式で周辺の山行も楽しめることから、新人も気軽に参加できるスタイルが評価されています。また、低体温や熱中症などのトラブル時に備える意識の大切さについても、多くのメンバーが再認識する機会となります。
● 今後の課題と展望
一方で、今年度は新人・未経験者の参加が伸び悩んだ点が課題として挙がっています。今後はさらに多くの新メンバーが参加しやすいよう、鈴鹿山行や他訓練とセットで開催するなど、訓練内容や情報発信に一層工夫を凝らしていきます。ツェルトの設営技術は、緊急時だけでなく山での自律性や安心安全を高めるものです。今後も『使える装備』として、全会員のスキルアップを目指した継続的な取組みを推進していきます。
● 練習の合間の交流も大切に
訓練後は手作りカレー、肉料理を囲みながら交流を深め、会員同士の親睦も深まりました。ヒル被害に遭うハプニングもありましたが、それもまた現場ならではの「実践経験」として語り草となっています。最後に、ご参加いただいた全ての皆さまに感謝申し上げます。今後も安全で実用的な山行のために、こうした訓練の機会を継続的に展開していきます。